九州で今一番注目を集めている産業と言えば、自動車関連企業。日産自動車やトヨタ自動車、ダイハツ車体など完成車メーカーが続々と北部九州に進出し、関連部品メーカーも相次いで参入している。九州での自動車生産台数の能力は年100万台を超え、「カーアイランド」と呼ばれるまで存在感が高まってきた。
九州経済調査協会の調べによると、2000年以降、九州の自動車部品工場の新規立地件数は50件を上回った。日産自動車九州工場(福岡県苅田町)の稼働を機にした1970年代後半(36件)と、トヨタ自動車九州(福岡県宮若市)の操業開始と日産九州工場の増設が重なった90年代前半(95件)に次ぎ、現在は第三次ブームとも言われる。
九州で集積が進むのは「人材確保」「物流」「調達」の面でメリットがあるためだ。トヨタグループの拠点である愛知県では有効求人倍率が1倍を超えているのに対し、福岡県などは1倍を下回り、人手を確保しやすい。新北九州空港や高速道路の整備も進み、輸送面での効率化も期待できる。鉄や化学品など自動車生産に不可欠な資材を調達しやすい環境でもある。中国など経済成長の続くアジアへの本格的な輸出をにらみ、アジアに近い地の利を生かそうとの戦略もある。
課題は地場の部品産業をどう育成するかという点。完成車メーカーが地元企業から部品を購入する割合を示す「地場調達率」は現在5割程度とみられる。これはトヨタのおひざ元である中部地区などから進出してきた部品メーカーの分も含めた数字で、「純粋な地元資本の企業からの割合はせいぜい2~3割では」との声がもっぱら。
福岡県は09年度までに北部九州で年150万台まで生産能力を引き上げる計画を新たに打ち出したが、経済波及効果を最大限に引き出すためにも、地場産業の活性化策が不可欠といえる。